第72回全日本実業団対抗選手権が9月21日~23日にかけて開催された(山口・維新百年記念公園陸上競技場)
その3日目、男子110mハードルは野本周成(愛媛競技力本部)が13秒38(+0.8)で優勝。来年の東京世界選手権の参加標準記録(13秒27)まであと0.11秒とし、若手が育つ男子ハードル界で改めてその存在感をアピールした。
機器の不具合があり、スタート前にはかなり長時間待たされる格好となったが、野本の集中力は途切れることはなかった。号砲と同時にゆったりと、それでも周りの選手を身体半分先行したかと思うと、余裕のあるハードリングとともに丁寧なインターバル。シーズンピークのようなパワフル&シャープな動きではない。どちらかというとふわふわした感じ。だがみるみる加速していく。ほかの選手はついていけない。「後半でスピードに乗れた。上半身が使えるようになってきた」と語ったように、ゴール時には大差での圧勝となった。
昨年はパリ五輪を目指して自分を追い込み、ケガに悩まされた。
今年1月から本格的に拠点を愛媛から広島へ移し、100mハードル日本記録保持者の福部真子(日本建設工業)とともに、尾﨑雄祐コーチに師事。特別なことはせず、日々のトレーニングを性格に、丁寧にこなしているというが、まさに教科書を見ているかのような今回のレースがその象徴となった。また、トレーニング面だけではなく、女子ハードル日本記録保持者の福部真子と一緒に練習することで、オリンピック、世界選手権を目指す気構えが当たり前になってきたことがメンタリティ面での変化だ。
来年には東京世界陸上が控える大事な時期。
丁寧に、かつ無茶をしないように。そんなオフ期を見据えるようなレース展開。
だとするならば、この冬を越えてさらに強くなった野本が東京の地で躍動することになるか、大いに期待だ。