男子110mハ-ドルA決勝では予選トップの泉谷駿介(26、住友電工)が13秒38(-0.2)で古賀ジェレミー(18、順天堂大)に0秒02差の僅差で勝利。前日本記録保持者の意地を見せた。
古賀が好スタートを切ると、泉谷もしっかりと付いていった。序盤は古賀がスピードに乗った走りで後続を離していったが、終盤に泉谷が徐々に差を縮めて、ラストのハードルで並ぶと、最後に古賀を振り切って優勝した。
泉谷は「もう少しハードルにぶつけないで、技術的にスーと抜ける感じ、練習でやっている感じを再現したかったなって感じはあります」と振り返り、それでも「競っている中でちゃんと後半、勝ち切れたので評価してもいいかなと思います」と語った。
===筆者の目線===
なぜ泉谷の記録が平凡なものに終わったか。そのポイントはハードルを越える際の「ディップ」という動作だ。ジャンプした後、ハードル上を通過するときに前傾姿勢になる、あの動きのことである。
どんな意味があるのか。大きく分けて3つある。
①重心の高さを大きく上下動させずに、前進ベクトルを崩さないようにする
②跳躍に前回転をかけることで抜き足を後方から引きあげ、スムーズにハードルを越えられるようにする
③ディップをかけた状態からハードルを越えた際にディップと逆方向の動き(上体を起こす)をすることで、上半身を土台にインターバルの1歩目を強く押し込む(➡そうすることで2歩目も連動して鋭く出てくる)
特に大学生以上の男子のハードルはハイハードルと呼ばれ、高さが106.7cmとかなり高く、イメージで言うと小学校4~5年生の平均身長くらいの高さだ。そうなるとどうしても体は並行移動とはいかず、多少山なりのジャンプがハードルの台数分必要になる。それをそのままぴょーんと跳んでは①②③が実現できず、記録は狙えない。
そんな重要な動き「ディップ」だが、今回の泉谷の走りと東京2025世界陸上での走りを比べると、入りのタイミングが遅く、「ディップ」がかけ切らないままハードルを越えてしまっている。よって、ハードルのたびに重心が山なりになりスピードの減速幅は大きくなるし、当然前回転もないから抜き足が上がってこずハードルに当たりやすくなる。そしてインターバルの入りの踏み込みもふわっと置く接地になりスピードは乗らない。
まさにそれが顕著に出た走りだったように見えた。
ただし、これらはシーズンが深まってくると解消される課題であり、現状その条件でこのタイムと勝負強さが出ていることは、決して泉谷のパフォーマンスの絶対値が落ちた、というわけではない。
以降の彼のパフォーマンスを目にする際は、上記が改善されたかという観点に着目して観てもらっても面白いかもしれない。