2022年9月23~25日に開催された第70回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会で、ミズノ所属の児玉芽生が100mでは11秒39、200mでは23秒49のダブル大会新記録で優勝した。

圧倒的なレース展開

100m・200mともに圧倒的なレース運びだった。
スタートこそ先行しないものの、中間疾走での追い上げは他の追随を許さない。ひとたびトップに立ってしまえば、持ち前の接地時間の短さでロスなくゴールまで駆け抜ける。その走りの性質が特に目立ったのは200mでだった。コーナーを抜けて直線に入ったその瞬間には、他の選手はまるで置いてきぼりの様相だった。

とはいえ、ここしばらく日本の女子陸上では自力で世界標準を切ることができずにいる冬の時代が長く続いている。世界と戦うにはまだ力不足感が否めない。11秒1台をコンスタントに出し、10秒台も臨める、それが最低限だ。そこに近づいていくにはむしろ2位の君島愛梨沙(土木管理総合)のような、タメのある力強くバネにあふれた脚質も一つの解になるのかもしれない。

君島とのライバル関係

君島との2強状態はしばらく続いている。特に君島は兒玉に引っ張られるかのようにどんどんと安定して高いレベルのレースを繰り広げている。追われる兒玉は必死だ。
だが、お互いを認め合う二人は一度レースから離れれば仲良し。ストイックな兒玉も今度はひたすらに明るい君島に引っ張られ、レース後にはスタジアムで満面の笑顔を見せ、お互いの健闘を称えあう場面が見られることも少なくない。その瞬間は筆者もなんとなくだがスタジアムの温度が少し上がったような温かい空気を感じていた。その場に訪れた観客も同じように感じたのではないか。

ともに研鑽し、レースという最大の盛り上げを作りながらも、何かホッとするような会場の空気を作り出せる二人の女性アスリートは、世界で戦える選手になるまで磨きあえるか。注目だ。

By 大澤

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